「・・・眠い」
そうつぶやきつつ私は机に伏せた。
今は学校の2時間目の休み時間。
昨日寝たのは深夜3時。
原因は簡単。ギターだ。
中学生から始めてもう・・・何年目だろう?
確か・・・5年目かな?
早いなぁ。姉さんも同じくらいに始めたんだっけ・・・。
まぁいいや。今はとりあえず睡眠時間を補わなければマズイ。
「ねーりたん!」
・・・う。こんな時に。
「んー何・・・?今眠いから後にして・・・」
「えー?だってもう休み時間終わるよ?大体ねりたんは深夜まで起きてるからいけないんだよ~」
この子は親友の「市居梢」。もう小学生から一緒だ。まさか高校まで一緒とは思わなかったけど・・・。
梢も中学2年生からギターを始めた。・・・私の方が長いけど実際彼女のほうが上手い。
てか弾きながら歌えるってスゴイ。
「で何の用事?」
「今日さ、楽器屋行かない?」
・・・
放課後。ここまで来ると流石に眠くはない。というか結局のところ午後は寝ていただけだった気が・・・。
ホームルームが終わって帰る準備をしたのち梢と合流して楽器屋に足を運ぶ。
ココの楽器屋は品揃えが評判の楽器屋だ。今持ってるエピフォンのレスポールもココで買ったもの。
せっかく来たんだし、弦でも買ってこうかな。
「あー、いいなぁ、コレ欲しいなぁ・・・」
梢が一本のギターをずっと眺めてぼやいている。
「フェンダー テレキャスター リッチー・コッツェンモデル」だ。
梢は何回もココに来てはこのギターを見ている。
確か「Mr.BIG」のギタリストだったっけ。
物凄く上手いんだよね・・・。
このコッツェンモデル、物凄くネックが太いことで有名。
おそらく私じゃ持たない部類のギターかな。
一回持ったけど私じゃ弾きづらい感じ。
梢は持った瞬間気に入ったみたいだけど。
あとは値段の問題かな。流石に10万台はイチ高校生には辛いよね。
だから梢は今フェンダージャパンのテレキャスターを使ってる。
今の私がギブソンのレスポールを買えないのと同じだ。
お金は貯めてるけどまだまだ。まぁ現状で今はいいんだけど・・・。
結局私は弦とピックを買って、梢はスコアを買って楽器屋を出た。
・・・・
「今日は何買った?」
「弦とピック」
「あはは。ねりたんらしいや」
「楽器屋に行く時間が無かったからね~、ストックもなくなっちゃったしちょうどよかったよ。梢は?」
「楽譜~。今度バンドでやる曲が入ってるんだ~」
「ふーん」
「ねぇねぇ」
「何?」
「ねりたんはバンド組まないの?」
「一緒にやる人がいないよ~。それに私が居たらみんなの足引っ張っちゃうし」
「そんな事無いと思うけどなぁ・・・」
バンドかぁ・・・。そういえば自宅で練習してばっかだから音あわせとかやったことないなぁ・・・。
姉さんと何回かジャムった事はあるけど・・・。
姉さんは上手すぎて私がついていけない。
「そうだ!玲さんは?」
「姉さんは既にソロの方がいい気がする・・・」
「あはは・・・玲さん相変わらずアコギだけ?」
「うん。こないだマーチン買って来てた」
「あー、いいなぁ。やっぱ大学生は違うなぁ・・・」
そんな談笑をしつつお互いの帰路に。
「それじゃねりたん、また明日ね~!」
「うん、また明日」
そう言って私達は別れた。今日はまず弦の張替えでもしようかな。せっかく買ったんだし。
それからいつものようにコードの練習。それからそれから・・・。
「ただいまー」
家に帰るとリビングからアコースティックギターの音が。
姉さんだ。相変わらずいい音を出すなぁ。
思わず聞き惚れてしまう。流石は姉さんだ。
「ん?あ、お帰り~」
「うん、ただいま」
「あれ?楽器屋行ったの?私も呼んでよ~」
この人が私の姉さん「音乃玲」だ。
・・・またの名を「アコースティックマスター」
どんな曲でもアコギで弾く。
むしろエレキギターを触った所なんて見たことがない気がする。
「何弾いてたの?」
「エリック・クラプトンのブルー・アイズ・ブルーだよ」
・・・相変わらず難しいのを弾くな、この人は。
「瑠璃も弾く?」
「楽譜見てみる」
「ハイ」
「ありがと」
・・・うーん。難しい。まぁでも練習してみますか。
まずは弦を張り替えからだ。
そう思いつつ私は自分の部屋に入った。
続く
次回
「yankee rose」
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